インプラントの寿命
インプラントの寿命(生存率)についてご説明します
ご自分の歯を失ったところに、ご自分の歯の代わりにインプラントを用いて噛み合わせを作るのが、インプラント治療ですが、平均的なインプラントの寿命についてご説明します。 寿命=生存率 としてご説明します。ここで書く生存率とは、インプラントが骨の中にあり噛み合わせを装着している状態をさします。
一番大事な時期は、埋入直後から3ヶ月 この時期の骨とインプラントの結合状態がとても重要!
骨とチタン製のインプラントが、他の金属と比べていちばん骨と結合することがわかっていますが、その結合状態を決定するのが、埋入から3ヶ月です。 この時期にインプラントと骨が結合した面積は、いつまでも変化することはありません。つまり、3ヶ月を過ぎてインプラントと骨の結合する表面積は、向上することはありません。 一度、結合したインプラントと骨は、埋入から3ヶ月までをピークに緩やかに減少してゆきます。たいていの場合そのように維持するか、減少してゆきます。 そのため、インプラントであっても、自分の歯のように歯周病になり、いつかグラグラしてきます。
もっとも生存率が低いのは最初の1年間 この時期を問題なく乗り越えるのがとても大事!
もっとも生存率が低く、脱落するインプラントが0.5%といわれています。当クリニックのケースの場合でも0.2%の脱落があります。 原因は、複数あります。口腔内にある病原菌の感染、ドリルによる火傷(やけど)、チタンの拒絶反応の一種 などがあげられます。 ・口腔内の細菌による感染を防ぐために これは、まず手術日までの正しい歯ブラシの仕方を復習して、きれいに手入れしてもらうことが必要です。担当医や衛生士が判断し歯ブラシのご指導を行います。また、手術直前の口腔内の汚れを十分に落とし、イソジンガーグルなどを付けて綿花でゴシゴシ口腔内を清掃します。これによって大幅に改善します。 ・ドリルによる火傷(やけど)を防ぐには 新しいドリルを使用することが一番です。切れ味の悪くなったドリルを使用した場合、硬い骨など特に削るのが難しくなり熱を発します。結果、火傷になりますので新しいドリルに定期的に交換して使用することが大変重要です。それから、注水する液体を直前まで冷蔵しておくとより温度を下げられますので効果的です。 ・チタンの拒絶反応を防ぐ方法 これは、実際拒絶反応が本当にあるのかどうか十分に理解されていないようで、そもそもチタンアレルギーがあるようだとする研究報告に曖昧性があるように思います。今後より解明されるでしょうが、現在のところ脱落する理由としてはあげられても、未知の部分が多く防ぐ方法が残念ながらないように思います。金属アレルギーの激しい方には、酸化チタンのアレルギー検査ができる医療機関の皮膚科で検査することをお勧めしています。
上顎と下顎で違うインプラントの寿命(生存率)
どうして、上顎と下顎との間に生存率の違いがあるかというと、骨の密度がそれぞれ違うからです。上顎骨は密度が低く、下顎骨は密度が比較すると高いのです。 密度がある程度高いほうが、インプラントと骨の結合が良くなりますので、結果がよくなります。しかし、硬すぎる骨も生存率が下がります。理由は、硬すぎる骨にインプラントをきつく埋入すると圧迫された骨が壊死を起こすことがあることと、骨の密度が高いが故に血流が乏しく新たに骨が出来ずらいこと、ドリルで骨を削るとき熱を発しやすいなど理由が挙げられます。
20年使用できる成功率 上顎93% 下顎95% 程度といわれています
私が大学を卒業後に研修医で大学病院に勤務していた時の成功率は、一般的に5年もつのが80%とも90%とも言われていました。その頃のインプラントシステムは、ブレードタイプ(板状のインプラント)であったりサファイアインプラント(結晶化ガラス)または、初期のタイプのブローネマルクインプラントシステムです。不具合が多く成功率が低いシステムでした。 現在のインプラントの主流は、チタン製インプラント表面構造がザラザラしたTPSで、溝があるスクリュー形態です。また、表面にセラミックをコーティングしてあるものです。成功率は、向上し、20年使えるのが上顎で93% 下顎で95%程度といわれ予測されています。実際は20年後に確定しますが、これまでのインプラントの治療結果から予測された成功率です。 ずいぶん良くなったと、治療を行う側の人間として思っています。 されに研究が進み、インプラントの成功率はどんどん上がっていくと思います。科学は、停滞することなくいつまでも進んでゆくのです。 いつか「人体の寿命が尽きるまで生涯使えるインプラント」が登場するのではないかと思っています。
もっとも長く使用されたインプラント
歯科で活用する現在のインプラントは、1965年初めて行われました。その頃に治療した方が、お亡くなりになるまでインプラントは丈夫に使われていたとのことです。45年くらいの使用に耐えたケースもあり、現在のインプラントシステムのプロトタイプであっても潜在的な能力の高さが、長寿命の結果に表れています。 治療を受けられた方も相当助かったのではないかと思います。 現在のインプラントは、初期のタイプと本質的には同じですが、改良が進んでいます。デザイン(インプラントの形)の改良、噛み合わせを作るための部品類、インプラントのセラミックコーティング、噛み合わせの材料としてジルコニアセラミックの向上、光機能化処置の登場でさらに好結果が期待できます。 光機能化については、別にページを設けますので、よろしければご参照ください。 この処置は、特殊な装置でインプラント表面に紫外線を照射することによって、インプラント表面のカーボン(炭素)が除去され、水分となじみが改善し、骨を作る細胞を引き込むことで骨結合力が2-3倍進みます。